ある夜の呟き

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「……参った。」

あんな所で、吹き出す様な羽目になるとは思っていなかった。

「リョウの奴……。」

思い出すのは、風に靡いた銀の髪。
大きく見えていた細い背中。
そして…。

「……だから、リョウと居るのは嫌いなんだ。」

否応なく、思い知らされるから。
失われたものを。
在る筈だった幸せを。

「十年…半、か…」

長い様で、それでもあっという間に過ぎてきた時間。
リョウとは付かず離れず、
敢えて連絡を断つ事も取る事も無く過ごしてきた時間。

ここまで近く長く居る事が珍しく、
忘れていた…　否、忘れた振りをしていた事を
突き付けられる。

「大概、しつこいよな…　俺達も」

きっと、いつか終わるその日まで
忘れることは無いのだろう。

忘れたいとも、思わないから。

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