その日の理由。

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自室に戻り、乱暴に荷物を放り投げる。
思う様に動かない左手に舌打ちをしながら、鍵を閉めて上着を脱いだ。

「……っ」

左腕の包帯を解き、止めていた血流を戻せば
じわりと滲んでくる、あか。
床に滴る前にと乱暴に拭って、あらためて包帯を巻いていく。

城塞騎士等やっていれば掠り傷は日常茶飯事。
それでもここまで深く切る事はそうはない。

「は…、油断した…か」

訓練で怪我をした、というのは半ば嘘だ。
ただ、仕事上で怪我をしたと言うのなら本当で。

投げた荷物から煙草を取り出して、窓を開けた。
微かに灯る街の灯を見下ろしながら、火を付ける。

「流石に、当たらない物だな…」

傷んだ肺に、冷えた空気と煙が染みていく。
この感触は嫌いじゃない。

流れる紫煙を見やりながら。

「……まぁ。投げる物でもないしな、盾」

咄嗟に投げたら外してその隙に噛まれたとか…
流石に、言えない。

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突っ込み厳禁。（脱兎）